広域科学科の基本理念は、学際的総合性であり、現代社会が直面する複合的問題に対処することを目的としている。現代杜会は、環境問題、エネルギー問題、人口問題、都市問題、等の他、科学技術の急速な発展が社会へ与えている種々の影響など、さまざまな領域横断的かつ複合的な間題を抱えている。20 世紀の科学は物理学に代表される時代であった。すなわち、ものごとを理解する上で、その構成要素をできるかぎり細かく理解することが不可欠であると考えるデカルト以来の還元主義的なものの見方が支配的であった。しかし、世紀の終わり頃には、それだけでは私達が直面する現代の問題を解決できないことが明らかとなり、むしろマクロな視点が重要視されるようになって、私達は 21 世紀を迎えた。
広域科学科がめざすところは、単に生物学と化学との境界領域としての生化学といった狭い意味での学際ではない。時には学貫的 (トランスディシブリナリー ) 問題という言葉で表現することもあるように、複数領域を包含する視点と、新しい問題解決法の探索である。この学科は、私達が身をおく情報システム、自然システム、そして地域システムを具体的な研究対象として、21 世紀に私達が抱える諸問題を、より広域的また文理横断的にみる姿勢を十数年前に掲げて研究を続けてきた点で、東京大学の中にあって極めてユニークな存在と言うことができるだろう。